旧約聖書には、さまざまな物語が書かれていることで有名で、名前を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
旧約聖書は、ユダヤ教とキリスト教の正典。旧約聖書という呼び方は、キリスト教の立場からのもので、「旧約」とは神とイスラエル民族との古（旧）い契約という意味を持ちます。
旧約聖書は、39巻まで続いており、原文はヘブル語またはアラム語で書かれています。１人の人が書いたものではなく、約1000年の間に多くの人々が書いたものが集められているものです。
そこで、今回はそのなかでもサムソンという登場人物についてご紹介します。実は、サムソンは、髪の毛との特別な関係があることでも有名なのです。
1.旧約聖書に登場するサムソンとは
サムソンは、旧約聖書に登場する人物の一人で、民を正しい方向に導くために神様によって送られたイスラエルの英雄的存在の士師です。旧約聖書の「士師記」にはサムソンを含めて12人の士師が登場していますが、その中でも最も有名な人物。
士師とは、イスラエル民族を敵から守るために神様からつかわされた英雄たちのことをいいます。イスラエル内の問題などを裁くこともあったため、「裁き司（さばきつかさ）」とも呼ばれていました。
旧約聖書には、このように書かれています。
「主が彼らのためにさばきづかさを起されたとき、そのさばきづかさの在世中、主はさばきづかさと共におられて、彼らを敵の手から救い出された。これは彼らが自分をしえたげ悩ました者のゆえに、うめき悲しんだので、主が彼らをあわれまれたからである。」（士師記2章18節）
士師の彼らはいわば、軍事的・政治的指導者のような立ち位置だったのです。
しかし、サムスンの特徴は、圧倒的な怪力を持ちながら女性に弱いという個性豊かなキャラクターでもありました。
2.サムソンとデリラという女性の存在
旧約聖書の話の一つに、「サムソンとデリラ」という話があります。簡単なあらすじをご紹介します。
サムソンはある時、ソレクという谷にいるデリラという女性を好きになりました。これを知ったイスラエルの宿敵であるペリシテ人たちは、デリラに言いました。
「サムソンの怪力の秘密をうまく聞き出してくれ！そうすれば、我々1人ずつ銀1100枚をデリラに与えよう。」
お金に目がくらんだデリラはサムソンに怪力の秘密を何度も聞き出そうとしますが、サムソンは毎回デタラメを言ってなかなか真実を教えようとしませんでした。
毎回、「弓弦で縛ってみたら力はなくなる」「綱（つな）で縛ったら力はなくなる」「髪を織り込んでクギで留めたら力はなくなる」などと言いましたが、どれも全く効き目はないのです。
しかし、デリラは何度もしつこく聞いてきます。最後には、デリラの泣き落としにサムソンは愛情から負けてしまい、ついに自分の力の秘密を話してしまいました。
「私は生まれてから一度も頭にかみそりを当てたことがない。もし髪を剃られたら私の力は弱まり、普通の人間のようになってしまうだろう。」
これを聞いたデリラはサムソンをひざ枕で眠らせ、サムソンの髪の毛を全て剃ってしまいました。すると、本当にサムソンは力が抜けてしまったのです。
力が抜けたサムソンはペリシテ人に捕らえられ、目をえぐり出された後牢屋にぶち込まれてしまい籠城生活を送ることになるのです。
3.それでもサムスンは復活を遂げる
ペリシテ人に捕らえられたサムスンは深く後悔をします。
「28サムソンは主に呼ばわって言った、「ああ、主なる神よ、どうぞ、わたしを覚えてください。ああ、神よ、どうぞもう一度、わたしを強くして、わたしの二つの目の一つのためにでもペリシテびとにあだを報いさせてください」。」（士師記16章28節）
このとき、ペリシテ人たちは宿敵サムソンを捕らえたことで大喜びし、盛大な宴会をしていました。そして、彼らは上機嫌のまま笑い者にしようとサムソンを呼び出したのです。
すると、この時点でサムソンの髪の毛は少しずつ伸び始めていたのです。このことに気付かないままペリシテ人たちはサムソンを笑いましたが、サムソンは神様にお祈りしました。
「神よ、もう一度だけ私に力を下さい。ペリシテ人たちに復讐を果たさせて下さい。」
すると、不思議なことに再びサムソンに神の力が宿ったのです。
そして、サムソンは建物を支えている２本の柱を見つけ出し、思い切り２本の柱を手で押しながら言いました。
「私とともに滅びるのだ、ペリシテ人たちよ！」
すると、建物は全てのペリシテ人たちの上に崩れ落ち、サムソンの命とともに道連れになりました。その時道連れになったペリシテ人の数は、それまでサムソンが裁きを行ってきたペリシテ人の数より多かったと言われています。
4.サムソンの力の源は髪の毛だった！？
サムソンとデリラの話を思い返してみると、サムソンの髪が力の象徴だったのは間違いありません。しかし、その力はそもそもどこから与えられたものだったのでしょうか。
それは、神様から授かった特別な力だったのです。しかし、特別な力を授かるときに、破ってはいけないルールがあったのです。
サムソンは、神様から言われていたルールを破ってしまいました。そのルールとは、以下の３つです。
- ぶどう酒や強い酒を飲まないこと
- 汚れたとされる食べ物を食べないこと
- かみそりを頭にあてないこと
ルールのなかに、「かみそりを頭にあてないこと」という約束があるにも関わらず破ってしまったのでサムソンは力が抜けてしまったのです。
好きになってしまった女性のお願いだったとしても、神様との約束は守らなければいけなかったですよね。男性が女性に弱いと言われるのは、もしかしたらサムソンの話に繋がっているのかもしれません。
