ヴェラ・ウォン
ハートが一番大事なのよ。 情熱さえあれば、なんでもすぐに上手くなるし、一生懸命働けるわ。
マライア・キャリーやジェニファー・ロペスなど名だたるセレブリティーを始め、いまや世界中の花嫁を魅了してやまないのが、ヴェラ・ウォンのウェディングドレスです。
そのすっきりとしたシルエットと華美な装飾のないシンプルなドレスは、それまで一般的だった煌びやかに飾られたドレスとは全く異なり、アメリカ人女性にとってのドレスのあり方というものを根本から変えてしまいました。
俳優としてハリウッド映画にも出演する、人気コメディアンのケヴィン・ハートと結婚したモデルのエニコ・パリッシュは、結婚式のドレスを探していた時にヴェラのドレスを一目見て、「これこそ私がずっと求めていたドレスよ。他のドレスなんてもう考えられないわ」と瞬間的に感じたのだと言っています。
毎朝4時に起きてはリンクへ行き、授業が終わればすぐにアイススケートの練習をして、ライバルよりも10分でも多く滑ることにこだわるほど、ヴェラのアイススケートに対する情熱は徹底したものでした。
そうやって熱心にアイススケートに打ち込んだことによって、常にもっとうまくできる、もっと学ぶことができるという考え方を身につけたそうで、彼女はそのスタンスをアイススケートをやめてファッションデザイナーとなった今も、ずっと持ち続けているのだそうです。(1)
「頭」と「心」の順位では、先に来るのは「心」の方で、例えば子どもの持っている遊びたい、体を動かしたいという欲求を押さえ込んで、無理矢理勉強ばかりさせていると自発性に乏しく、無気力で無反応な子どもになってしまうことがあります。(2)
ハーバード大学で経営学を教えるロバート・カプラン氏によれば、潜在能力をフルに引き出すためには、心が望んでいることと頭で考えていることが連携する必要があって、知性とスキルだけではどんなに優秀な人でもいずれ限界がくるのだそうです。(3)
あのスティーブ・ジョブズも、「情熱さえあればうまくいったも同然だ」というふうに語っていますが、情熱があるから人は困難に立ち向かい、逆境をはねのけ、仕事や人生に意味を見出すことができるのではないでしょうか。
しかし、多くの人は「とりあえずお金を稼いで、夢は後から追いかけたい」などと口にして、熱意があるからこそ仕事で成功したり、高い成果を上げることができるということは見落としてしまいがちです。(4)
ハーバード・ビジネススクールの卒業生100人を対象に行った調査では、卒業する時に明確な目標を持ち、それを紙に書き出していた2人は10年で全体の平均年収の10倍を稼いぐようになっていたと言いますし、夢に向かって真っ直ぐ進んでいる人とそうでない人の間に、とてつもなく大きな差があることは間違いないでしょう。(5)
ファッションデザインの道に全てを捧げていたヴェラは40歳で結婚することになった時、自分が求める現代風なドレスや洗練されたドレスが見つからなかったことをきっかけに、ウェディングドレスのデザインをすることを思いついたのだそうです。(6)
「私は結婚式の新たなファッションを作れると思ったの。現代的な女の子にはもっとモダンなドレスを、ロマンチックな子にはもっとロマンチックなドレスを作ることで、もっともっと女性の個性は輝くわ。」
サントリー創業者の鳥井信治郎は「やってみなはれ」の精神で、日本人の味覚と風土にあったウイスキーを13年かけて完成させましたが、自分の求めるものが無かったらまずは、「自分でそれを作れないだろうか?」と考えてみることがポイントなのかもしれません。
なんでもやってみなければ「これは好き」とか「これはつまらない」というのは分かりませんし、初めは興味が持てなくてもやっているうちにその作業をすごく好きになるということもあるので、そういう意味でやはり「まずはやってみる」ことが大切なのではないでしょうか。
ヴェラは自身の成功の秘訣について「何でもいいから何かを好きになることね。一旦夢中になれば、どんどんのめり込んでいくわ」と語っています。(7)
現代社会においては、計画や計算を考えることが優先され、心の声がなおざりにされてしまいがちですが、そんな時はヴェラが純粋にファッションを楽しんでいるように、自分の気持ちに正直になるように意識してみるとよいのかもしれません。
1. Diane Dakers 「Vera Wang: A Passion for Bridal and Lifestyle Design(Crabtree Groundbreaker Biographies)」 (Crabtree Pub Co、2010年) P22, 23
2. 山口創 「子供の「脳」は肌にある」(光文庫新書、2004年)P105
3. ロバート・スティーヴン・カプラン 「ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ」(CCCメディアハウス、2014年)Kindle 921
4. ロバート・スティーヴン・カプラン 「ハーバードの自分を知る技術 悩めるエリートたちの人生戦略ロードマップ」(CCCメディアハウス、2014年)Kindle 1093
5. 市村洋文 「1億稼ぐ人の「超」メモ術」 (プレジデント社、2017年) P14
6. Diane Dakers「Vera Wang: A Passion for Bridal and Lifestyle Design(Crabtree Groundbreaker Biographies)」 (Crabtree Pub Co、2010年) P45
7. Diane Dakers 「Vera Wang: A Passion for Bridal and Lifestyle Design(Crabtree Groundbreaker Biographies)」 (Crabtree Pub Co、2010年) P102