ストーリー

One Life, One Thought
Vol. 87

レディー・ガガ

あなたに影の部分があるなら、それは光が当たっている証拠よ

2018/03/22

Illustrated by KIWABI - Lady GaGa

アメリカの人気女性歌手レディー・ガガは、世界で最も権威ある音楽賞のひとつのグラミー賞を2度受賞し、 米国の国民的スポーツイベント、スーパーボウルのハーフタイムショーでパフォーマンスをするなど、アーティストとして世界で輝かしい活躍を見せています。

順風満帆な人生を送っているように思える彼女ですが、かつては過酷ないじめにあっていたそうで、14歳の頃には学校のロッカーにひどい落書きをされたり、男子生徒からゴミ箱に投げ込まれたりもしていたのだそうです

レディ・ガガにはいじめに苦しんだ過去があった

↑レディー・ガガにはいじめに苦しんだ過去があった(リンク

小学生の頃から周囲と馴染めず、大学生になるとその奇抜なファッションで目立つ存在となったために執拗ないじめに合うようになり、それが原因で薬物依存に陥ってしまったといいます。

しかし周囲の助けもあって、音楽を極めるために薬物を断ち切る決意をしたことで現在のレディー・ガガが生まれたのだそうで、彼女は「生きる」ことについて以下のように述べました

「生きるということは1度に限ったことではなく、何度も生まれ変わるということだと気付いたの。自分の中の最も正直な自分を見つけるまで、人は何度でも生まれ変わることができるの。」

人は何度でも生まれ変わることができる

↑人は何度でも生まれ変わることができる(リンク

ガガはPTSDという日常生活の中でもストレスや恐怖を感じる精神障害に長い間悩んでいたらしく、それが7年前に受けた性的暴行によるものだと最近になって打ち明けました

彼女は誰にも打ち明けることのできなかった7年間は非常に辛い時間だったといいますが、その事実を打ち明けたことで、周りの人たちがとても優しく接してくれて、その優しさが彼女の人生を救ったそうです。

またそのようなトラウマを経験したことで他人をより理解できるようになったといい、ガガがスーパーボウルで歌った『Born this way』という歌には、「私は私のままでいい」という個性を認めるメッセージや、マイノリティーを勇気付ける以下のような歌詞が含まれています。

「ゲイであろうと、ストレートであろうと、バイセクシャルであろうと、レズビアンであろうと、トランスジェンダーであろうと、私の生き方は間違っていない。私は生き抜くために産まれてきた」

自分の普通じゃないところと向き合いなさい。そこにはダイヤモンドが隠れているから

↑自分の普通じゃないところと向き合いなさい。そこにはダイヤモンドが隠れているから(リンク

「あなたに影の部分があるなら、それは光が当たっている証拠よ」と言うガガは、人々は心の闇や自分が普通ではないと思う部分としっかり向き合って、その中から独特な部分を見出していくべきなのだと考えているのです。

ガガはもっと自分を愛して自分らしく生きようといったメッセージを常に送っていますが、現実では多くの人が個性を捨て社会から求められる人間像に適合しようとします。

あなたに影の部分があるなら、それは光が当たっている証拠よ

↑あなたに影の部分があるなら、それは光が当たっている証拠よ(リンク

東京大学で名誉教授を務める姜尚中は、現代人は自分が生きている世の中が生きづらいと思ったとき、多くの人がその原因は「社会的価値観」と乖離している自分自身にあるのだと自分の方を否定しがちだといいます。(1)

現代社会では、進学、就職、収入、社会活動、人間関係など、どのような生き方が賢くて、どのような生き方が尊敬されるといった価値観が異様なくらいに画一化されているため、その社会的価値観に適合するために私たちは自分自身を捨てようとするのだそうですが、「本当の自分」を隠して生きていってもただ辛いだけでしょう。

心理学者のアルフレッド・アドラーは、自分自身を受け入れ、好きにならないことには幸せは手に入らないと述べており、足りないものばかりに目を向けたところできりがなく、大切なのは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使いこなすかであると語りました。(2)

大切なのは自分自身を受け入れること

↑大切なのは自分自身を受け入れること(リンク

学校制度は産業革命期のイギリスで生まれたもので、子供たちを一箇所に集め「望ましい工場労働者」を大量生産するための工場であり、効率よくマネジメントするために「普通」になることを強要してきます。(3)

そういった教育が未だに続いているために、私たちは「普通でない」事に異常に敏感になってしまっていますが、それを自分にしかない大切な個性として受け入れなければいつまでたっても幸せにはなれません。

多くの哲学的なことを描いた漫画家チャールズ・シュルツのキャラクター、スヌーピーが言った言葉に「配られたカードで勝負するしかない。それがどういう意味であれ。」というものがあります。

私たち与えられたカードは「自分自身」であり、そのカードには癖や個性があるかもしれませんが、誰とも交換することはできません。

与えられたあなたというカードを受け入れ、使いこなしていくことで、この世界はもっと生きやすくなるのではないでしょうか。

参考資料
1. 姜尚中「心の力」(集英社新書、2014)kindle 634
2. 岸見一郎「アドラー心理学入門」(ベスト新書、1999)kindle 1543
3. 堀江貴文「すべての教育は「洗脳」である~21世紀の脱・学校論~」(光文社新書、2017)kindle 210