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Essence for your beautiful life
2017/07/03

©東海テレビ放送

カラフルで、静かで、強い
建築家夫妻の美しい暮らし
『人生フルーツ』から学ぶこと

白髪のおじいさんとおばあさんが、こちらにニッコリと微笑みかける。見る人の気持ちをほっこりと和ませるこのショットは、映画『人生フルーツ』の劇中写真です。建築家で90歳の津端修一さんと、87歳の英子さん夫妻の美しい暮らしを伝える同作品は、異例のロングランで公開中。自分たちの手で、自分たちらしい生活を作ることを楽しみ、互いを尊重し合う夫妻の生き方が話題を呼んでいます。

映画は、冒頭からふたりのチャーミングでオシャレな生活ぶりが満載です。たとえば、70種の野菜と50種の果実、そして季節の花々を育てる庭には、あちらこちらに黄色の札が。札には「シャクヤク 美人かな?」「タケノコ コンニチハ!」など、修一さん自筆の丸い文字が愉快に並びます。食を何よりも大切にする夫妻の食卓には、いつも清潔なテーブルクロスがかけられ、庭の野菜で作った料理をはじめ、イチゴのケーキ、ガトーショコラなど、英子さん手作りのメニューがふんだんに登場。夢のように活き活きと、カラフルな生活を送るふたりは、「秀たん」「英子さん」と名前で呼び合う仲睦まじさも見せます。

焦らない。愚痴を言わない。得た恵みは周囲に分ける

けれど、寄り添いながらも決して依存し合っているわけではなく。食卓を囲む以外の時間は、それぞれが好きなことに熱中。自立心旺盛で、“癒し”“スローライフ”という言葉では片づけられない、ふたりの強さの理由が、映画の進行とともにじわじわと伝えられます。そして、後半で、予想もしなかった出来事が起こるのです……。

土を耕し、食を豊かに、そして家を「暮らしの宝石箱」に仕立てた津端夫妻。焦らない。愚痴を言わない。自分たちが得た恵みは周囲に分ける。この哲学をもって暮らせば、こんなにも上品な人生を歩めるのか。そのことを静かに教えてくれる映画です。

人生フルーツ』 東京・ポレポレ東中野でロングラン上映中ほか全国順次公開中

text : Aki Tanaka(キクカクハナス)