ジョージ・クルーニーの妻、人権弁護士 アマル・クルーニー
どんな理由であれ、私の活動が注目されることは良いことです。
国際的な人権問題に取り組む弁護士であるアマル・クルーニーは、2014年にハリウッドの人気俳優ジョージ・クルーニーと結婚し、世界中にその名前が知れ渡るようになりました。
「一生独身宣言」をしていたジョージ・クルーニーを射止めたという話題性だけにとどまらず、その美貌とファッションセンスが世間の注目を集め、アマルは一気にセレブリティの仲間入りをしたかのように見えましたが、アマルは自身に、「ジョージ・クルーニーの妻」としての注目が集まることについて次のように述べています。
「どんな理由にせよ、人々が私の活動に注意を払ってくれるのはありがたいと感じています。」
アマルは、ジョージ・クルーニーと結婚する前から人権派弁護士として、ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏や、ウクライナの元首相であるユリア・ティモシェンコ氏らを顧客に持つだけでなく、コロンビア・ロースクールやハーグ国際アカデミー等の名だたる機関で教壇に立った経験も有していました。そのキャリアは結婚を機に変化することはなく、結婚後も意欲的に裁判に取り組み、2016年9月にはテレビ番組に主演し、テロ組織ISISと法廷で戦うことを宣言しています。
また、モルディブに民主主義をもたらした元大統領が、政敵である独裁政権派の現政権によって、テロ容疑で有罪判決を受けた事件では、アマルは元大統領の弁護士としてモルディブ政府から元大統領の釈放を勝ち取りました。これはモルディブという一国にとって、「民主主義」を奪還する第一歩となるような歴史的な功績と言うことができます。
しかしながら、メディアはアマルとジョージのゴシップを追いかけ、取り上げるアマルの情報はファッションなどの私生活に関するものが多く、アマルの人権擁護活動には、常にセレブリティであるという偏見が付きまとうようになっていました。イギリスの元司法大臣でさえも、アマルの功績はジョージと結婚したから成しえたものだと一蹴したそうです。
それが夫がらみであってもメディアに登場することが、世界における人権擁護活動に注目が集まる糸口になればよいとアマルは考えますが、知名度が高まることは、必ずしも良いことばかりではなく、特に、人権派弁護士としての活動は、政治的な思惑が絡まり、命を狙われる危険性をはらむことは避けられません。
アマルは、元モルディブ大統領の釈放を実現した後、繰り返し殺害の脅迫を受けているため、現在、自宅周辺の警備を強化する等の対策を取りながら活動を続けています。彼女だけでなく、自由が制限された国で人権擁護活動を行う弁護士や活動家たちは、不当な拘束や命の危険と隣り合わせの生活をしながらも、情報の力を強みとして目的を達成しようとしているのです。
中国では、人権擁護活動のリーダー的役割を担っていた女性弁護士が、突然政府の圧力を受けて消息がわからなくなってしまった際、彼女を助けるため署名活動を行った数百名の弁護士が一斉に逮捕されるという出来事がありました。これが政府に対する恐怖をあおり、人権擁護活動は下火になってしまうかとも思われましたが、リーダーたちの多くは、この事件の後も変わらず、市民に人権擁護活動を広げるため、情報を公開し活動に全力を尽くしています。
パキスタンの人権活動家マララ・ユフスザイも、イスラム過激派の脅威にさらされた学校生活や、女性が教育を受ける権利をメディアに通じて主張し続けました。その結果、標的にされ銃弾を受けてしまいましたが、人権擁護活動のリーダーたちは、自分たちの身の安全よりも、自分たちの活動に広く市民の関心を集め、社会をより良い方向に変化させる目的を達成することに注力しているため、「セレブリティ」といった世間の注目が集まる立場は非常に有効な武器だと考えるのです。
知名度をうまく活用して慈善活動に積極的に取り組んだセレブリティの先駆けであるオードリー・ヘプバーンは、女優として有名になった結果、人々が自分の声に耳を傾けてくれるようになり、社会活動という本当に価値のある仕事ができるようになったと自分の経歴を振り返り、次のように言いました。
「女優としての人生は、まさにユニセフのこの仕事をするためだったのだと思う。」
また、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーは、貧しい国の子供を養子として大切に育てているだけでなく、貧困国で自分自身が出産をすることで、メディアやファンに伝わる情報に慈善活動を絡めるなど、貧困問題にメディアの注目を集めることに成功しました。そして、彼女はさらに、生まれた自分の赤ちゃんの写真掲載権を4億円でメディアに売却し、その売却額全額を慈善団体に寄付するなどして、高い知名度があれば社会活動が有益になることを証明しています。
このように、セレブリティはその知名度をうまく活用することで、世間に大きなインパクトを与えるような社会活動を行うことができ、アマル自身も自らの弁護士活動について次のように述べます。
「どんな危険が潜んでいるかもわかっているが、戦う価値が十分あると思っているし、前向きな動きを仕向けるための役割を担いたいと思っている。」
アマルについてメディアの伝える情報は、ファッションやジョージとのバカンスなどのジョージの妻であることを意識させるものに偏っているというのは、紛れもない事実です。
しかし、昨年ある報道サービス会社がツイッターでアマルを「俳優の妻」と称したことに対し、「アマルは俳優の妻ではなく人権弁護士だ」という批判が集まり炎上したことにも見られるように、一般の人々にとって、すでにジョージとアマルの結婚はただの事実のひとつとなっています。アマルはついに「セレブリティ」としての知名度を、本当に価値のある仕事へと生かせるようになってきたのかもしれません。
セレブリティのファッションやゴシップだけでなく、その「信念」に注目し応援することで、私たちファンが、彼らの社会活動を前進させる一助になることが出来るのです。