タイタニックのヒロイン ケイト・ウィンスレット
年を重ねるとともに自信はつき、美しさはその人の中にある自信によって生まれる。
映画「タイタニック」の公開からもうすぐ20年。主演を務めたハリウッド女優のケイト・ウィンスレットは、40代に突入し10代の娘を持つようになった今、一切加工なしのすっぴん写真をフェイスブックにアップしたり、雑誌に掲載される自身の写真への加工を禁止していることで話題を集めています。ケイトはそういった活動を通じて、私たち女性にどのようなメッセージを送っているのでしょうか。
ケイトは、「若い世代に責任を持たないといけない。若い女性たちは、雑誌を読むことで、自ら選んだキャリアで成功を収めた女性たちについてよく知りたいと思っている。私はそうした世代に真実を伝えたい」と述べ、ありのままの自分を大切にすることの重要性を訴えかけます。
33歳までに6回ものアカデミー賞ノミネート回数を誇り、今年公開された映画「スティーブ・ジョブズ」でも助演女優賞にノミネートされたケイトは、年を重ねることで20代に抱えていた悩みの多くから解放され、経験は人の美しさに深みを与えると述べています。
今では「両親が私を産んでくれた姿が、自然美で一番だと思っている」と述べているケイトですが、学生時代には、足の太さやぽっちゃりとした体型といった外見的な特徴からいじめにあっていたそうです。
当時ドラマスクールに通っていたケイトは、役が欲しければ体型を変えなければいけないとダイエットした結果、だるさやめまいに悩まされるようになり、それ以降、外見のことに対する批判は一切耳に入れず、自分の信じることに邁進し続けました。そんな彼女は、幸せは外見から得られるものではないのだと主張します。
「人生はそんなことにフォーカスして時間を使っているには短かすぎる。だから私は心身ともに健康で、しっかり食べて幸せであることを選ぶ。」
ケイトが演技派女優として活躍の場を広げていけるのは、年を重ねることで失われるものに注目するのではなく、年を重ねることで得られる経験による学びが、外見的な美しさにも繋がっていくという考えを持つことができたからかもしれません。
オーストラリア出身の女優・映画監督であり、複数回アカデミー賞を受賞しているケイト・ブランシェットは、40歳を超える現在も、その美しさから、世界的な化粧品ブランドのグローバルアンバサダーの立場にあります。彼女は、自分がより美しいと感じるときは、自信が持てているときで、そしてその自信は、年齢を重ねるごとに感じられるものと考えているようです。
「自分がやっていることに充実感があるから、外見を気にしなくなったんだと思う。カメラや雑誌にアピールするために装うと、逆に魅力的でなくなってしまう。私は、人にきれいだと言われるためにドレスを選ばない。自分が感じるままに選んでいる。」
もっとも、二人のケイトは、ハリウッド女優として活躍できるような元々の美しさがあり、一般人とは違う特別な存在であることも否定できません。しかし、海外では、いわゆる一般の女性であっても、年を重ねることに対してポジティブな考えを持つ傾向があります。
あるイギリスの調査では、自分の最盛期がいつきたかという問いに対し、多くの女性が「35歳以降」と答えているのです。
外見的な美しさ、それも遺伝子的な「若さ」だけに注目した場合、女性の外見的な最盛期は、10代後半から20代ということもできますが、それにもかかわらず、同調査では、三分の一の女性が、「年を重ねるにつれて、自分の外見に対しより満足できるようになった」と答えています。海外の女性たちは、年を重ね経験を積むことで、自分の外見に対する自信を高めているようです。
また、フランスでは、個性を活かした自然体の美しさを大切にすることで、シミやシワという加齢のサインでさえも、オリジナルの美しさに深みを与えるエッセンスになり得ると考えられています。熟成されたワインのように、女性は年齢とともにどんどん魅力的になっていくと捉えられているのです。
自分のありのままの姿が一番美しいことを十分理解しているパリジェンヌたちは、自分を必要以上に作りこんだりはしません。若くなりたいと願う暇があったら、自分を「一番良いバージョン」に更新するほうがいい、と考えているのです。
年齢を重ねることのメリットは、科学的な調査からも明らかになっており、ボストンの科学者による調査では、年齢を重ねることで、細胞の老化に伴う肉体的な機能が衰えていく一方で、脳や精神面における機能の一部は、年を重ねても衰えないという驚くべき結果が発表されました。また、同意語や反意語を使いこなし、会話を円滑に行うような能力にいたっては、年を重ねることで、より向上していくという結果が出ています。
自分の細やかな感情の変化を上手に伝え、相手の感情や価値観も十分に尊重するコミュニケーションが取れるようになることで、より深く満足のいく互いの理解が可能になるのでしょう。そのようなコミュニケーションの積み重ねによって、本来の自分への理解が深まれば、自分を認められるようになり、自分らしさへの自信も育つのかもしれません。
ココ・シャネルは、「ある一定の年齢を過ぎると、あなたの経験が、あなたの顔になる」と述べているように、人の顔というのは、若さによる美しさが薄れるほどに、その人の経た“歴史”を、良くも悪くも物語るものになるのでしょう。
ケイト・ウィンスレットは、「年を重ねるとともに自信はつき、美しさはその人の中にある自信によって生まれる」と述べていますが、自然美を磨き続けている女性たちは、年とともに経験を重ねることで自信をつけ、自分らしい美しさを日々更新しているのです。
1.カロリーヌ・ド・メグレ、アンヌ・ベレスト、オドレイ・ディワン、ソフィ・マス『パリジェンヌのつくりかた』(2014年、早川書房) kindle 1135-1146