ストーリー

One Life, One Thought
Vol. 86

ジョン・ウッド

最大のリスクは、たくさんの人が、あなたを説得して夢をあきらめさせようとすることだ

2018/03/15

マイクロソフトの幹部であったジョン・ウッドは、地位も安定した生活も投げ売り、社会起業家として発展途上国の子供たちのために図書館へ本を寄贈したり、教育の機会を与えるルーム・トゥ・リードを立ち上げました。

ルーム・トゥ・リードの設立以来、アジアやアフリカの子供たちを中心に1,800万冊を超える本を配布、また、識字率向上のためのプログラムを組み、それによって1,160万人の子供たちが教育の機会を得ることができました

ジョンの立ち上げたプロジェクトによって多くの子供たちが本を読む機会を得た。

↑ジョンの立ち上げたプロジェクトによって多くの子供たちが本を読む機会を得た。(リンク

ルーム・トゥ・リードを立ち上げようと、ジョンが人生を変えるきっかけになったのはネパールへの旅行でした。

ネパールの識字率は約65%で、国民の約4割は字を読むことができず、現在でも教育の機会を得ることができていません

子供の頃に図書館に入り浸っては夢中になって本を読んでいたジョンは、ネパールの図書館の本棚は常に空っぽで、図書館の館長は貴重な本を子供たちが汚してしまうからと、鍵のかかった金庫に大事に保管している様子に、言葉もでなかったようです。

本のない空っぽの図書館で、子供たちが学べるわけがない。

↑本のない空っぽの図書館で、子供たちが学べるわけがない。(リンク

ジョンは、どこの国に生まれるかによって、幼い子供が勝ち組と負け組に分けられてしまう、言わば人生の宝くじみたいなものであり、たまたま自分自身は恵まれていただけだとして、次のように述べています。(1)

「僕は若くして経済的に成功したが、その大半は幸運だったからにすぎない。たまたま、ふさわしいタイミングでふさわしい会社に入っただけ。お金を持っているほどすばらしい人間だというわけではない。本当に大切なのは、そのお金で僕が何をするかだ。」

人生は宝くじのようなもので、どこの国に生まれるかによって読書ができるかどうかすら決まる。

↑人生は宝くじのようなもので、どこの国に生まれるかによって読書ができるかどうかすら決まる。(リンク

ジョンは発展途上国の子供たちのために図書館を建てることが自分の進んでいく道だと確信し、前に進んでいきたいと考えていましたが、今まで懸命に働きマイクロソフトの幹部にまで登り詰めた実績や大切なパートナーとの関係が無くなってしまうことに恐怖を覚えていました。

しかし、「バンドエイドをはがす方法は二つある。痛いけどゆっくりはがすか、痛いけど一気にはがすか。きみが選ぶんだ。」と言う友人の言葉に決心がつき、全てに終わりを告げることにしたのです。

何かを決心するときにはネガティブなアイデアばかりが集まるけれども、考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみればいい。そう考えるようになったジョンは次のように述べています。(2)(3)

「最大のリスクは、たくさんの人が、あなたを説得して夢をあきらめさせようとすることだ。世の中には、うまくいかない理由をあげることが大好きな人が多すぎて、『応援しているよ』と励ましてくれる人が少なすぎる。一人で考える時間が長いほど、否定的な力に引き寄せられて取りこまれやすくなる。」

最大のリスクは、周りが説得して夢をあきらめさせようとすること。

↑最大のリスクは、周りが説得して夢をあきらめさせようとすること。(リンク

この時、ジョンが自分の心に従って自ら動き出したことによって、世界各国に図書館を建て、子供たちは教育を受ける機会を与えられ、「大人になったらこうなりたい」という思いを抱くことができるようになりました。ジョンは自分の行動で、子供達が将来の夢を持つことができたことに「もう一度この道を進むかどうか選べと言われたら、僕は間違いなく選ぶだろう。」と述べるほど、喜びを感じています。(4)

しかし、実際には、生活や今後のことを考えてしまうと踏み出せない人がほとんどではないでしょうか。

現代の人たちは稼ぐことを最優先にしがちですが、IT企業である株式会社メタップスを経営し、フォーブス誌の選ぶ「世界を救う起業家10人」に選ばれている佐藤航陽氏も、その人でなければいけない、「この人だからこそできる」といった独自性がそのまま価値に繋がりやすいのだと言いました。(5)

これからの経済はますます、人間の内面的な情熱を傾けられることのある人ほど利益を得ることのできる時代になっていくのです。

情熱を傾けられることを仕事にするのが主流の時代になってくる。

↑情熱を傾けられることを仕事にするのが主流の時代になってくる。(リンク

ジョンは、マイクロソフトでの経験が無駄であったわけではなく、結果の求められる厳しい環境で働いてきたからこそ、ビジネスの基本や交渉方法、プレゼンテーションなど身につけることができ、新天地に飛び立つことができたのだといいます。

新しいビジネスを始めるうえでよく言われていた「大きく行け、それができなければ家に帰れ」と刷り込まれたことも含め、ジョンにとってマイクロソフトでの経験は、新天地に飛び立つための飛躍台だったのです。

マイクロソフトでの経験は、新天地に飛び立つための飛躍台

↑マイクロソフトでの経験は、新天地に飛び立つための飛躍台(リンク

かつて能楽を大成した世阿弥は、人が上達していくためのプロセスを「守破離」という言葉で表していました。

これは、「守」は師匠に決められた通りの動きや教えを忠実にこなし、「破」の段階で自分なりに応用を加え、「離」で形にとらわれることなく自由に表現していくというものです。(6)

ジョンの場合、「守」「破」をマイクロソフトで経験し、ルームトゥーリードで活動するなかで「離」の段階になり、世界規模に拡大するプロジェクトに成長させることができたのだともいえるでしょう。

日本では昔から、守破離を人間の成長の道程としてきた

↑日本では昔から、守破離を人間の成長の道程としてきた(リンク

ジョンは子供時代の読書やマイクロソフトで働いていたという自分の過去と経験によって、子供たちに教育の機会を与えたいという目標がリンクし、点と点が繋がって線になりました。

今の仕事が情熱を傾けられることでなかったとしても、今懸命に働いているその経験があるからこそ、いつか情熱が生まれた時に自由に動き出せるようになるのです。

そしてその時が来たら、自分の心に素直に従い、周りからの評価やメンツを気にすることなく、振り返らずに自分の目標に向かって突き進むことができるかどうかで、自分の人生を充実したものにできるかどうかが決まるのではないでしょうか。

参考資料
1. ジョン・ウッド,「 マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」(ダイヤモンド社,2013) kindle 240
2. ジョン・ウッド,「 マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」(ダイヤモンド社,2013) kindle 993
3. ジョン・ウッド,「 マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」(ダイヤモンド社,2013) kindle 2973
4. ジョン・ウッド,「 マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった」(ダイヤモンド社,2013) kindle 3219
5. 佐藤 航陽,「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」(幻冬舎,2017) kindle 2101
6. 藤本 篤志,「社畜のススメ」(新潮社,2011) kindle 655