山崎直子
決して自分一人では、夢を叶えられませんでした
子どもの頃から宇宙に対して憧れを持っていた宇宙飛行士の山崎直子さんは、はじめは『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』といったアニメーションが大好きだっただけで、「宇宙飛行士」という職業をめざすようになったのは15歳の時だといいます。
山崎さんが実際に宇宙飛行士になりたいと思うようになったのは、クリスタ・マコーリフという一人の女性宇宙飛行士の影響によるものだったそうです。
クリスタは高校の社会科教師出身の宇宙飛行士で、宇宙からテレビを通じて数百万の子供たちに授業を行う予定でした。
しかし、彼女が搭乗したチャレンジャー号は打ち上げ直後に爆発し、クリスタを含める搭乗員7名は亡くなってしまったのです。
その事故をテレビの前で見ていた山崎さんは、女性であり、妻であり、母であり、教師であり、何より宇宙飛行士であったクリスタの夢をこの先も繋いでいきたいと考えるようになりました。(1)
山崎さんは大学を卒業後、JAXAに入社してから11年を経て宇宙に飛び立ちます。
その間に結婚や出産をするなど働く母となった山崎さんは「ママさん宇宙飛行士」というキャッチフレーズで世間から呼ばれることが多いそうですが、彼女はその愛称に対して違和感を持っているそうです。
事実として子供のいる日本人女性宇宙飛行士は山崎さんが初めてなのですが、彼女は「ママさん宇宙飛行士という言葉を使わないでください」とまでお願いしました。
なぜなら彼女の成功の陰には、長期の出張になれば日本からわざわざ駆けつけてくれる夫や、いつでも困った時には娘の面倒を見てくれる両親がいたからだといいます。
宇宙飛行士としての訓練やミッションでほとんどの時間を家にいることができなかったとしても、周囲のサポートによって支えてもらえたからこそ「働く母」としてここまでやってこれたのだと彼女は語りました。(2)
あまりにもマスコミが宇宙飛行士が母である事に異常に注目することはまだまだ働く母親への理解が浅いこの国の現実が見え隠れしていますが、周囲からの理解や支えがあれば、彼女のように働く母として成功する人がもっと出てくるのかもしれません。
デヴィッド・スタインドル・ラストという修道士はTEDトークの中で、「人々は幸せな時に感謝すると考えてるが実際はそうではなく、感謝が幸せをもたらすのだ」と述べました。
幸せになろうと全てを手に入れても、次から次へと別のものを欲しがるがためにいつまでたっても幸せになれない人もいれば、逆に多くの不運を背負っていながらも与えられているものに感謝をし、心の底から幸せを感じている人の両者がこの世界には存在します。
つまり結局のところ幸せは自分自身のこの世界に対する見方次第であり、「自分の成功は周囲の人々の支えのおかげだ」と思える山崎さんのような見方で毎日を過ごすことで豊かで幸せを感じる生き方ができるのでしょう。
アメリカの人気トークショーホストのオプラ・ウィンフリーも、感謝の心を持ち続けてきたからこそ、今の成功があると述べている人物の一人です。
オプラは、毎晩自分が感謝したことを5つピックアップしてリストにする「感謝日記」を10年以上欠かさずつけ続けているそうですが、この習慣のおかげで人生に対する見方が変わるのだといい以下のように述べています。
「人生に何が起きても感謝の心を忘れずにいることを学んだ時、チャンスや人間関係、そしてお金までもが、自分のもとに流れてきた」
山崎さんは「決して自分一人では、夢を叶えられませんでした」と宇宙飛行士になるという夢を叶えたことに対してコメントしています。
宇宙飛行士になるまでの道のりの中でいかに多くの人に支えられてきたかに気づき、感謝の心を持てたからこそ、山崎さんはその夢に近づくことができたのかもしれません。
日常生活の慌しさにおぼれてしまいそうな環境の中でも、感謝の気持ちを忘れないためには、感謝日記をつけるために日常の中で感謝すべきこと探すのもいいでしょう。
夢へと猛進した結果いろいろなものが犠牲になってしまうよりも、一度ゆっくりと立ち止まって周りに目を向けることが、夢を叶えるための最善策なのかもしれません。
1. 「夢をつなぐ 宇宙飛行士・山崎直子の四〇八八日」(角川文庫、2013)kindle 107
2. 「夢をつなぐ 宇宙飛行士・山崎直子の四〇八八日」(角川文庫、2013)kindle 687