KIWABISM

One Life, One Thought
Vol. 80

マリリン・モンロー

大切なのは、自分自身の目で、世界を見ること

2018/02/02

マリリン・モンローは、誰もが守ってあげたいと思ってしまうような愛らしさと美貌を武器に一世を風靡しましたが、その容姿ばかりが注目されることで彼女が大きく傷ついていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか。

まなざしの揺れ、柔らかな膝の動き、そして色っぽい腰のおろし方などの女性らしさに満ち溢れたしぐさに囚われた当時のマスコミや一般の人々の、マリリンの中身を見ようとしない視線に、彼女はひどく苦しんだのでした。

私の価値って容姿だけなの?

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“不良少女”と呼ばれるような素行でろくに授業も受けていなかったマリリンは高校を中退して芸能界へ入ったのですが、自分には教養がないという思いはいくつになっても消えることがなかったそうで、その苦悩について次のような言葉を残しています。

「自分が三流だっていうことは、よくわかっていたわ。才能がないという実感もあった。外側はともかく中身がだめなのよ。安っぽい下着をつけているみたいに。だから、勉強したい気持ちは凄かった。自分を変えたかった、自分を豊かにしたかったの。それ以外にはもう何もいらなかったわ。男も、お金も、愛も。」(1)

↑本当の魅力とは悩み苦しんだ分だけ生まれるもの

↑本当の魅力とは悩み苦しんだ分だけ生まれるもの(リンク

その一方でマリリンは、世間で当たり前とされている価値観に対して、「レッテルよ、みんなレッテルを貼りたくてしかたないの。そうしておけば自分たちは安全だから」と反発していました。(2)

多くの人が「ヌードモデル=低俗で卑しいもの」と考えていたのに対してマリリンは、生きていくために必要で、自分が悪くないと思っているなら恥じる必要はないという考えから、カレンダーのヌードモデルになったこともあったそうです。

また、マリリンは同性愛者であったナターシャという女性と親密な関係となった時期があり、同性愛者の友人も多くいたことから、当時、彼ら、彼女らが世間の人々から晒されていた強い偏見にも憤りを覚えていました。

↑人がレッテルを貼りたがるのは弱い自分を守るため

↑人がレッテルを貼りたがるのは弱い自分を守るため(リンク

他者にレッテルを貼ってしまうと、その人の辛さや悲しさを理解することはできなくなってしまいますが、作家で尼僧の瀬戸内寂聴さんによれば、相手の気持ちを全部分かることなどできないとわきまえた上で、それでも自分の想像力を働かせて相手のことを分かろうとし続けることこそ大切なのだと言います。(3)

マリリンの場合、幼い頃から誰にも愛されずに育ったという気持ち、誰も自分のことを必要としていないという感覚を死ぬまで拭うことができず、消えて無くなってしまいたくなるほどの劣等感にさいなまれ続けました。

それでも教養を身につけたいという思いから、本をたくさん読むなどして、どこまでも自分自身と向き合い続けたマリリンは、他人のことも同じように理解しようと努力し続けることができたのです。

↑他人の気持ちは簡単には分からないけどそれを理解しようとすることが大事

↑他人の気持ちは簡単には分からないけどそれを理解しようとすることが大事(リンク

いまでは同性婚が法的に認められる場所は増えていますし、セクハラ被害を告白するムーブメント「#MeToo」によって日本でも多くの女性が実名を挙げて男性と対峙し、本音を語ろうと動き出しました。

しかしながら、早稲田大学の加藤諦三名誉教授が「現代社会では資本主義が行きすぎてしまったために、どれだけ仕事ができるかということや、社会的な成功を成し遂げたかどうかということで人の価値を測るようになってしまった」とコメントしているように、まだまだ多くの“レッテル”が人々を苦しめていることに違いありません。(4)

マリリンは寛容さが世の中で最も大切なことのひとつであり、これからの世界に必要な要素なのだということを次のように訴えています。

「私はこれから物事をはっきりと、正しくは見つめるわ。私の内部にある真の核心を見極めて、それから新しい眼で外の世界を見つめるの。見つめるということは人をそれだけ寛容にするわ。寛容さは、この世で一番大切なことのひとつですもの。」(5)

↑今の世界に必要なのは寛容さを与えるということ

↑今の世界に必要なのは寛容さを与えるということ(リンク

これだけの考えを持っていたというにも関わらず、セックスシンボルであるがゆえに、どんな言葉を発しても、まともに相手にされなかったことをマリリンは「どうか私を冗談扱いしないで」と嘆いたそうです。

しかしながら、「夜、何を着て寝ますか?」という質問に対して「シャネルの№5よ」と言ったマリリンの言葉がこれほどまでに広く知られるようになったことは、マリリンの想像力や才知の豊かさが映し出されているのではないでしょうか。

内に秘めた強い劣等感とそれを打ち破るために必死でもがきながら行った努力こそ、マリリンに本当の美しさを与えたのであり、私たちも何か引け目に思ってしまうことがあるのであれば、それを克服しようと努力する心持ちでいることで、より魅力的になれるはずです。

参考書籍
1. 山口路子「マリリン・モンローという生き方」(新人物往来社、2012年)Kindle 297-300
2. 山口路子「マリリン・モンローという生き方」(新人物往来社、2012年)Kindle 381-382
3. 瀬戸内寂聴、稲盛和夫「利他 人は人のために生きる」 (小学館、2014年)Kindle 282
4. 西田亮介 「不寛容の本質」(経済界、2017年)Kindle 160
5. 山口路子「マリリン・モンローという生き方」(新人物往来社、2012年)Kindle 1891-1893