ストーリー

One Life, One Thought
Vol. 66

アメリカ人気トーク番組ホスト、エレン・デジェレネス

何が起こったって受け止めることができるわ。だって、ありのままの自分で生きているから。

2017/10/13

優れたテレビ番組やその制作関係者に贈られるエミー賞を数多く受賞している人気トーク番組「エレンの部屋」のホストを務めるアメリカ出身のエレンデジェレネスは、1997年にテレビ番組の中で自らが同性愛者であることをカミングアウトしました。

2015年にアメリカ連邦最高裁判所が、同性婚を全米で合法化したことは記憶に新しいですが、エレンがカミングアウトをした当時は、社会における同性愛者への偏見が強くあり、実際に彼女が同性愛者であることをカミングアウトした後、しばらくしてその番組が打ち切りになりました。

その後も彼女が仕事のオファーを求めて連絡しても、誰も返事さえしてくれない期間が3年間続き、この状況が永遠に続くように感じたそうです

同性愛者であることをカミングアウトしたあとの3年間は永遠に感じた

↑同性愛者であることをカミングアウトしたあとの3年間は永遠に感じた(リンク

エレン自身も、自分が同性愛者であることをカミングアウトしたら視聴者がどんなに彼女のコメディや番組が好きだとしても、そのシンプルな事実だけで嫌われる可能性もあることはわかっていたそうです。

それでも彼女はカミングアウトをすることを決断しましたが、その理由について以下のように述べています

「真実を話すことはキャリアよりも大切でした。なぜ私は世間的に成功し有名であるために同性愛者であることを恥じているわけ?と思ったのです。」

世間的成功よりもありのままでいることの方がずっと大切

↑世間的成功よりもありのままでいることの方がずっと大切(リンク

エレンはもともとスタンダップコメディアンとしてキャリアをスタートさせましたが、それは彼女にとって素晴らしい道のりであると同時に非常に辛いものでもありました。その理由は、彼女が自分自身の才能を持って人々を笑わせ、楽しませている華やかな舞台の裏で、自らが同性愛者であるという真実を隠して生きていたためです。

早稲田大学の名誉教授であり作家の加藤諦三は、「見捨てられる不安がある人は、自分のしたいことができない」と言い、例えば、結婚したとしても「こんなことをしたら嫌われるのではないか」と思いながらパートナーとの関係を保つことに注力していれば、自分のしたいことなどできず、ストレスが溜まるだけの時間を過ごすことになります。

その一方で、自分らしく生きる人は人から好かれると言います。というのも、自分らしく生きることは、「理想の自分になろう」といった無理をしないことであり、人から好かれよう、尊敬されようといったやましさがなくなるため、周りから好感を持たれるようになるのです。(1)

ありのままの自分で生きることで何も恐れることはなくなった

↑ありのままの自分で生きることで何も恐れることはなくなった(リンク

心理学者のアドラーも、人々が幸福になるためには自分自身を受け入れ、自分らしく生きていくことは欠かせないと言いますが、その反面、社会は育児や教育を通じて望ましい人間像を押し付け、何かに「なる」ことを強要するため、なかなかありのままの自分でいることが受け入れられないといいます。(2)

しかし「成功者」や「幸せな人々」などは、社会が私たちに植え付けた虚構のイメージです。

実際には「今あるがままの自分」しか存在しないのですから、あるがままの自分を受け入れ好きにならないことには、いつまでたっても幸せにはなれないのだそうです。(3)

望ましい人間像なんて虚構に過ぎない

↑望ましい人間像なんて虚構に過ぎない(リンク

エレンは番組の人気が出ていた最中に自らが同性愛者であることをカミングアウトすることについて非常に悩み、周囲の知人からもそうしない方がよいと諭されたといいます。

しかし、勇気を出してカミングアウトをしたことで彼女は自分らしく生きることができ、何が起ころうと受け入れることのできる強さを手に入れたのであり、カミングアウトをして良かったと次のように述べました。

「私にとって人生で最も大切なことは、人生を誠実に生きることです。無理に自分ではない他の誰かになろうとせずに、自分の人生を正直に、思いやり深く生きることです。いまは自分らしく生きることができ、恐怖心や秘密はありません。何が起ころうと受け止めることができます。なぜなら、ありのままの自分で生きているからです。」

ありのままで生きている人には恐怖心などない

↑ありのままで生きている人には恐怖心などない(リンク

2016年には当時の大統領であったオバマ氏からアメリカの民間人に送られる最高位の勲章である大統領自由勲章がエレンに贈られましたが、そのスピーチの中でオバマ氏は20年前に同性愛者であることをカミングアウトした彼女について「エレンの行動はアメリカを正しい方向に導いてくれた」と称賛しました。

エレンがありのままの自分を受け入れ、勇気を持って世間に公表したことで、アメリカが正しい方向に動いたというのは決して言い過ぎではないでしょう。

私たちは社会から押し付けられる「理想像」という虚構と自分自身を照らし合わせ、世間の理想からは程遠い「本当の自分」を隠そうとしますが、理想などあくまで虚構のものですし、ありのままの自分で生きていかなくては、いつも「本当の自分」を見抜かれることを恐れて生きるつまらない人生になってしまうのではないでしょうか。

参考書籍
1. 加藤諦三「感情を出したほうが好かれる」三笠書房 (2011) kindle版 901
2. 岸見一郎「アドラー心理学入門」 ベストセラーズ(1999)kindle版 1121
3. 岸見一郎「アドラー心理学入門」 ベストセラーズ(1999)kindle版 1044